カスタマーサクセスのKPIを設定するには?考慮するゴールやKPI設定・運用の注意点を解説【2024年最新版】
まだまだ新しい概念であるカスタマーサクセスに取り組む営業マネージャーの方であれば、KPIとしてどの指標を見ればいいのか?悩んでいるはずです。
- カスタマーサクセスのKPIはどんな指標を設定すればいい?
- KPIのゴールになるカスタマーサクセスのKGIは?
- カスタマーサクセスのKPI設定 / 運用で注意しておくべきポイントは?
そこで本記事では、カスタマーサクセスのKPIが重要な理由、ゴールとなるカスタマーサクセスのKGI、KPIとして考慮すべき重要な指標を解説!カスタマーサクセスKPIを設定・運用する際の注意ポイントも紹介していきます。
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【無料】カスタマーサクセス代行会社を紹介してもらうなぜカスタマーサクセスのKPIが重要なのか
カスタマーサクセスとは、顧客の成功体験を支援することで顧客満足度を高め、リピート / アップセル / クロスセルを促す活動、または部署のこと。
従来からリピート / アップセル / クロスセルは重要課題でしたが、SaaS / サブスクリプションモデルが増加する現代ではカスタマーサクセスの重要度は高まる一方。
なぜなら、継続利用が前提となるSaaS / サブスクリプションでは、獲得した顧客を優良化し、継続利用を促すのが最低条件だからです。
そのため、カスタマーサクセスでは「オンボーディング」から「アップ / クロスセル」まで、顧客の状態に応じたさまざまな施策を実行して活用度・満足度を高めていきます。
この過程で得られた多数の指標のうち、なにがゴール達成に向けたKPIとして適切なのか?見極めることがカスタマーサクセスの成功ポイント。
カスタマーサクセスのKPIが重要な理由はここにあります。
カスタマーサクセスのゴール(KGI)とは
当然、多数の候補のなかから適切な指標をKPIに設定するには、カスタマーサクセスのゴール、つまりKGI(重要目標達成指標)を設定しなければなりません。
それでは、カスタマーサクセスのゴールとはなんでしょう?カスタマーサクセスの目的は、顧客の成功体験を支援して利益を最大化することです。つまり、カスタマーサクセスのゴールは「LTV(顧客生涯価値)」もしくは「MRR(月次経常収益)」に設定される場合が一般的。特にSaaS / サブスクリプションモデルを採用する企業に多いKGIです。
LTV(顧客生涯価値)/ MRR(月次経常収益)とは
LTV(顧客生涯価値)とは、ユーザーが契約から解約までの期間、自社にもたらす収益(Life Time Value)のこと。顧客が製品・サービスを継続利用するほど、アップセル / クロスセルするほどLTVが高くなるため、多くの企業がカスタマーサクセスのKGIに設定しています。
LTVを算出する計算例は以下の通り。
- 顧客平均単価 ÷ 解約率
- 顧客平均単価 × 平均購入回数
- 年間取引額 × 収益率 × 継続年数
一方のMRR(月次経常収益)とは、毎月繰り返し得られる収益(Monthly Recurring Revenue)のこと。初期費用などは含めず、毎月の継続的な収益を合算する指標であるため、SaaS / サブスクリプションモデルのカスタマーサクセスKGIとして用いられています。
MRRを算出する基本的な計算式は「月額料金 × 顧客数」ですが、前月のMRRから、以下の4つのMRRをプラスマイナスすることで、当月のMRRを算出します。
MRRの種類 |
概要 |
収益 |
New MRR |
新規顧客を対象にしたMRR |
ローンチ時の指標として活用 |
Downgrade MRR |
前月からダウングレードした 既存顧客の損失分MRR |
収益が減少 |
Expansion MRR |
前月からアップグレードした 既存顧客の増加分MRR |
収益が増加 |
Churn MRR |
当月に解約した既存顧客の損失分MRR |
収益が減少 |
カスタマーサクセスKPIの重要指標
LTV / MRR、どちらをKGIに設定するかによって、適切なカスタマーサクセスKPIが異なるのは当然ですが、取り扱い商材によっても見るべき指標は異なります。
ただし、数ある指標のなかでも、カスタマーサクセスのゴールと関連深い、重要なKPI(指標)として挙げられるのが以下の3点です。
チャーンレート(解約率)
チャーンレート(解約率)とは、契約中の既存顧客が、どの程度の割合でサービスを解約しているか計測する指標。カスタマーサクセスKPIとしてチャーンレートが重要な理由は2つ。
1つはLTV / MRRを計測するための重要な指標であること。2つ目は、顧客の成功体験を支援する、カスタマーサクセス活動の結果を計測する指標として最適なことです。
特に、継続利用が前提のSaaS / サブスクリプションビジネスモデルを採用する企業には重要。チャーンレートが高いままでは、いくら新規顧客を獲得しても、LTVの改善やビジネスの成長は望めません。チャーンレートをカスタマーサクセスKPIに定める企業が多いのはこのためです。
ただし、チャーンレートには「顧客数ベースのカスタマーチャーンレート」「売上ベースのレベニューチャーンレート」の2つがあることは覚えておきたいポイント。両方のチャーンレートを計測しながら、状況に応じてどちらを重視するのかを判断していきます。
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートとは、測定期間内に新規契約・契約継続した顧客数に対し、解約した顧客数がどの程度の割合になるかを計測する指標です。カスタマーチャーンレートを算出する計算例は以下の通り。
- ・測定期間内に解約した顧客数 ÷ 測定期間内に新規契約・契約継続した顧客数 × 100
顧客数ベースのカスタマーチャーンレートは、サービスをローンチした初期段階で重視されることが一般的です。
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートとは、解約による測定期間内の損失額が、総売上に対してどの程度の割合になるかを計測する指標です。レベニューチャーンレートを算出する計算例は以下の通り。
- ・(測定期間内の解約数 × 単価)÷ 測定期間内の総売上 × 100
売上ベースのレベニューチャーンレートが重要な理由は、顧客の契約内容によってサービス単価が異なるから。サービス運用が安定期に差し掛かった段階で重視されることが一般的ですが、カスタマーチャーンレートも引き続きチェックしていく必要があります。
オンボーディング率
オンボーディング率とは、オンボーディング中の全顧客数に対し、オンボーディング完了した顧客数がどの程度の割合になるかを計測する指標。オンボーディングとは、サービス導入後、顧客が自身の手で運用をはじめるまでの期間・フェーズです。
カスタマーサクセスKPIとしてオンボーディング率が重要な理由は2つ。1つはオンボーディング完了までの期間が長い顧客は、サービスを解約する確率が高いこと。2つ目はオンボーディングが完了しなければ、カスタマーサクセスの目標である成功体験を提供できないことです。
導入してもなかなか運用が開始されない状況は、サービスがなくても困らないこととイコール。顧客がサービスを使い始めなければ、本来持っているはずの価値も伝わりません。
このため、ほとんどのカスタマーサクセスチームが「オンボーディング」を最重要課題に掲げています。多くの企業がカスタマーサクセスKPIとして、オンボーディング率を採用する理由です。
ただし「なにをもってオンボーディング完了とするのか」は、サービスによって異なります。一般的には、自社商材の特性に応じてオンボーディング完了を定義付け、「完了した顧客数 ÷ オンボーディング中の全顧客数 × 100」でオンボーディング率を算出します。オンボーディング完了の定義例は以下の通り。
- ・初期設定が完了し、データベースに入力開始された時点(1か月以内を推奨)
・入力されたデータをもとに、レポートが作成された時点(2か月以内を推奨)
アップセル / クロスセル率
アップセル / クロスセル率とは、契約中の全顧客数に対し、アップセル / クロスセルした顧客数がどの程度の割合になるかを計測する指標です。
アップセルとは、現在契約中のサービスを上位版にアップグレードすること。クロスセルとは、契約中のサービスと関連するサービスを追加購入してもらうこと。どちらも顧客単価アップに寄与する要因であり、複数のサービスプラン・プロダクトを提供する企業にとって重要な指標です。
カスタマーサクセスKPIとしてアップセル / クロスセル率が重要な理由は2つ。
LTV / MRRを計測するための重要な指標であること。カスタマーサクセス活動の成果を計測する指標として最適なことです。
ただし、KPIに設定したからといって、顧客にアップセル / クロスセルを無理強いしてはいけません。アップセル / クロスセルは、あくまでもカスタマーサクセス活動の結果として付いてくるものだからです。成功体験を提供するために必要だと判断した顧客にのみ、アップセル / クロスセルを提案しましょう。
【無料】カスタマーサクセス代行会社を紹介してもらうカスタマーサクセスのKPIは変動する
KGIとして設定する指標はなにか、どのような商材を取り扱うのかなど、さまざまな要因で適切なカスタマーサクセスKPIは異なりますが、それだけではありません。ビジネスの成長ステージが変われば、設定すべきカスタマーサクセスKPIが変動することもあります。
たとえば、ローンチ当初の成長ステージでは「カスタマーチャーンレート」を、安定ステージ以降では「レベニューチャーンレート」を重視するのは上述した通り。同じように、ローンチ当時に設定したカスタマーサクセスKPIが、ビジネスの成長に応じて「KGIの達成を評価する指標」として適切ではなくなる場合があります。
カスタマーサクセスKPIとして「チャーンレート」「オンボーディング率」「アップセル / クロスセル率」が重要であることは変わりません。しかし、状況にあわせてKPIを見直し、場合によっては別の指標をKPIに設定し直すことも重要です。
カスタマーサクセスのKPIで考慮したい指標
それでは、主要な指標以外に、どのような指標がカスタマーサクセスKPIとなり得るのか?
候補となるいくつかの指標を簡単に解説していきましょう。
リテンションレート(維持率)
リテンションレート(維持率)とは、契約中の全顧客に対し、契約を維持(継続)する顧客がどの程度の割合になるか計測する指標のこと。チャーンレートとは表裏一体の関係性となるため、以下の計算例でリテンションレートを算出できます。
- ・100 - 「(測定期間内の解約数 × 単価)÷ 測定期間内の総売上 × 100」
リテンションレートを算出する場合は、売上ベースのレベニューチャーンレートを使うことが一般的です。
リテンションレートが高い状態は、安定した売上が期待できることとイコール。SaaS / サブスクリプションモデルを採用する企業にとって、重要なカスタマーサクセスKPIとなり得る指標です。
NPS(Net Promoter Score)
NPS(Net Promoter Score)とは、自社サービス・プロダクトに対し、顧客がどの程度のロイヤリティを感じているかを計測する指標です。ロイヤリティ(Loyaity)とは、忠誠心・愛着などを意味する英単語。つまり、NPSは「自社サービス・プロダクトに顧客がどの程度の愛着心・信頼感を持っているのか」を計測します。
NPSの計測方法は単純です。自社商材を「友人や同僚におすすめする可能性はどのくらいですか?」というアンケートを募り、0〜10点までで評価してもらいます。
評価点に応じた顧客ロイヤリティの度合い、NPSを算出する計算式は以下の通り。
評価点 |
顧客ロイヤリティ |
概要 |
10〜9点 |
推奨者 |
積極的に自社商材をすすめるロイヤリティの高い顧客 |
8〜7点 |
中立者 |
キッカケがあれば競合に流れてしまう可能性のある顧客 |
6〜0点 |
批判者 |
不平・不満を周囲に拡散してしまう可能性のある顧客 |
- ・NPS =(回答者に対する推奨者の割合)-(回答者に対する批判者の割合)
アンケート内容が「未来の可能性」に関するものであるため、NPSのスコアは「ビジネスの将来性」と関連深い指標だといわれています。NPSが「+100」に近いほど顧客ロイヤリティが高い状態になるため、カスタマーサクセス活動の成果を測るKPIとしても有効です。
CSAT(Cutomer SATisfaction score)
CSAT(Cutomer SATisfaction score)とは、文字通り、自社サービス・プロダクトに対する顧客満足度を計測する指標。「アンケートの結果を募る」点ではNPSと同様ですが、CSATには決められた計測方法があるわけではなく、Webサイト / インタビュー / 電話など手法もさまざまです。
一般的には「このサービス、機能に満足しましたか?」という問いに、大変満足から大変不満までの5段階で評価してもらうことがほとんど。このことからもわかるように、NPSが「ビジネスの将来性」と関連深いのに対し、CSATは短・中期的な課題に関連しています。
たとえば、自社サービス・プロダクトの改善、特定機能の評価など、短・中期的な課題解決に有効な指標が「CSAT」だといえるでしょう。
CSQL(Customer Success Qualified Lead)
CSQL(Customer Success Qualified Lead)とは、カスタマーサクセスで定めた基準をクリアした「ホットリード」を意味します。具体的には、アップセル / クロスセルにつながる可能性の高い既存顧客のこと。顧客の支援を通じて成功体験を重ねる必要があるため、カスタマーサクセス活動のKPIとして非常に「わかりやすい」指標です。
CSQLとしてクリアすべき基準は、サービス・ビジネスモデルによって異なりますが、顧客のステージ・フェーズに応じた成功体験を定義しておくことがおすすめ。たとえば、オンボーディングフェーズでは「サービス導入の目的・ゴールを経営層・現場で共有できている」などです。
オンボーディング / 導入支援 / アダプション(活用促進)それぞれで定義した成功体験をクリアできれば、CSQLとしてアップセル / クロスセルの可能性が高まります。
ヘルススコア
ヘルススコアとは、顧客が自社サービス・プロダクトをどの程度活用しているか、計測する指標です。具体的には、ログイン状況、データベース登録数など、複数データを組み合わせて判断しますが、企業によって指標となるデータは変わります。
一般的に、ヘルススコアが低い顧客は「活用が進まず解約の可能性が高い」と判断できます。施策が必要な顧客を見極め、活用を促していくカスタマーサクセス活動のためにも、ヘルススコアは重要な指標です。
カスタマーサクセスKPIを設定・運用する際の注意点
ここまでで、カスタマーサクセスKPIとして真っ先に挙げられる重要指標、状況に応じてKPIに設定したい指標をそれぞれ解説してきました。これを踏まえた上で、カスタマーサクセスKPIを設定する際、運用する際の注意点を解説していきましょう。
KGIとKPIの整合性 / KPIの数
カスタマーサクセスKPIを設定する際の注意点として挙げられるのは、KGIと整合性の取れた指標をKPIにすること。設定するKPIの数を最小限にとどめることです。
そもそも、KPIは「ゴールであるKGIの達成度・進捗度合いを評価する」ための指標です。
つまり、KPIを設定する際は「KGIと相関性が高いか?」という観点が重要。他社が採用している指標だからといった、安易な考えでKPIを設定していては、カスタマーサクセス活動が失敗に終わってしまうでしょう。
また、KPIは設定したら終わりではなく、管理・運用が必要です。有効だからといって、数多くの指標をKPIに設定していては、管理・運用が困難。その名の通り、KPIは「重要な指標のみ」にとどめておく必要があります。
カスタマーサポートのKPIと分けて考える
カスタマーサクセスとは異なった形で顧客を支援する部署に「カスタマーサポート」があります。このことからもわかるように、カスタマーサクセスKPIは、カスタマーサポートKPIと分けて考えるべきです。
なぜなら、カスタマーサクセスは「顧客の成功体験を支援するため」先回りしてフォローするもの。カスタマーサポートは「顧客の困りごとを解決するため」事後のフォローをするものだからです。
カスタマーサポートのKPIとしてよく挙げられるのは「一時応答の時間」「問い合わせの回答率」「問題解決にかかった回数」など。どれも事後でなければ計測できない指標であることが理解できるでしょう。
適切なツールを導入する
カスタマーサクセスのKGI / KPIを定量的に計測するためには適切なツールの活用が必要不可欠。CRM(顧客管理システム)を筆頭に、設定したカスタマーサクセスKGI / KPIを計測するのに適したツールを導入しましょう。
ただし、顧客の状態を5つのフェーズに分類し、それぞれで異なる支援を提供するカスタマーサクセスの場合、ツール選びは簡単ではありません。
フェーズごとに有効なツール、ツール選定のポイントを紹介しておきますので参考にしてください。
カスタマーサクセスのフェーズ |
有効なツール |
オンボーディング 導入支援 アダプション 契約更新 アップセル / クロスセル |
チュートリアル作成ツール FAQツール 問い合わせ管理ツール |
導入支援 アダプション 契約更新 アップセル / クロスセル |
カスタマーサクセス管理ツール |
アダプション 契約更新 アップセル / クロスセル |
NPSツール コミュニティ管理ツール |
ツール選定のポイントは以下の3点です。
- ・カスタマーサクセスの課題を明確にする
・アプローチしたいフェーズを明確にする
・機能 / コストのバランス
カスタマーサクセスのおすすめのツールや選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:カスタマーサクセスツール12選|フェーズごとのおすすめ・ツールの選び方を解説!
KPIを検証して戦略に反映させる
カスタマーサクセスKPIをマネジメントしていくポイントは、定期的に検証して戦略に反映させていくこと。戦略を実行した結果として、KPIの達成度が思わしくなければ、カスタマーサクセス戦略の修正・変更が必須だからです。
一方、市場環境の変化や、顧客の動向に応じて、カスタマーサクセス戦略自体を変更しなければならないことも考えられます。この場合は、戦略に応じてKPIを修正・変更する必要があるでしょう。決定したカスタマーサクセスKPIが絶対ではないと考えておくべきです。
【無料】カスタマーサクセス代行会社を紹介してもらうカスタマーサクセスKPIの設定方法を紹介しました
本記事では、カスタマーサクセスのKPIが重要な理由、ゴールとなるカスタマーサクセスのKGI、KPIとして考慮すべき重要な指標を解説。さらにカスタマーサクセスKPIを設定・運用する際の注意ポイントも紹介してきました。
まだまだ日本ではカスタマーサクセスという概念が定着しているとはいえません。一方、市場規模が頭打ち傾向にある日本では、顧客のLTVを最大化するためのカスタマーサクセスが必須の状況でもあります。継続的にビジネスを成長させていくためにも、いち早くカスタマーサクセスに取り組むことをおすすめします。
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